自宅用の個室ブースを選ぶ前に、設置できるかを先に確認する
自宅にテレワーク用の個室ブースを導入したいと考えたとき、多くの方はまず製品選びから始めます。
ただ、製品を決めた後に「そもそも設置できなかった」と判明するケースが少なくありません。
自宅への設置可否を左右するのは、主に次の5点です。
- 耐荷重:床が製品の重量に耐えられるか
- 搬入経路:エレベーターや廊下を通せるか
- 電源:工事なしで使えるか
- 空調:ブース内の暑さに対処できるか
- 遮音性能:期待する静けさが得られるか
このうち耐荷重と搬入経路は、後から変更が効きません。
製品の比較検討に入る前に確認しておくことをおすすめします。
本記事では、実際の設置現場で起きている事例をもとに、これら5つの確認ポイントを整理します。
自宅用個室ブースには2つのタイプがある
個室ブースは価格に大きな幅がありますが、これは構造の違いによるものです。大きく2つのタイプに分かれます。
簡易組立型

数万円台から購入できる、軽量なタイプです。
パネルやフレームを自分で組み立てる製品が多く、通販でも入手できます。
重量が軽いため設置の自由度が高く、集合住宅でも導入しやすい点が利点です。一方で、遮音性能は限定的です。
生活音を多少和らげる程度と考えておくとよいでしょう。換気ファンを備えないものも多く、長時間の利用では空気のこもりが気になる場合があります。
本格設置型

数十万円台からのタイプです。パネル構造で組み上げるため遮音性が高く、天井に換気ファンを備えた製品が主流です。
オンライン商談や長時間の作業を想定した設計になっています。
ただし本体重量が大きく、製品によっては300kg前後に達します。この重量が、自宅設置における最大の制約になります。
タイプ別の比較
| 項目 | 簡易組立型 | 本格設置型 |
|---|---|---|
| 価格帯 | 数万円~ | 数十万円~ |
| 重量 | 軽量 | 大きい(300kg前後の製品も) |
| 遮音性 | 限定的 | 高い |
| 換気 | 製品による | 換気ファン搭載が主流 |
| 組立 | 自分で組立可能な製品が多い | 業者が現場で組立 |
| 向く用途 | 短時間の作業、視覚的な集中 | オンライン商談、長時間業務 |
どちらが優れているという話ではなく、用途と設置環境で選ぶものです。
短時間の作業なら簡易組立型で十分ですし、日常的にオンライン会議を行うなら遮音性が判断材料になります。
設置可否を左右する最大の条件は「耐荷重」
自宅への設置で最初に確認すべきは、床の耐荷重です。
耐荷重の目安
建物の床が支えられる重さには基準があり、用途によって異なります。
| 建物種別 | 耐荷重の目安 |
|---|---|
| オフィスビル | 350kg/㎡ |
| 一般的なマンション | 180kg/㎡ |
本格設置型の個室ブースには、本体重量が300kg前後に達する製品があります。
この場合、一般的なマンションの想定値では設置が難しくなります。
「重量300kgを設置面積で割れば基準内に収まるのでは」と考えたくなりますが、実際には脚部への荷重集中や、使用者と機材の重量が加わることも考慮する必要があります。数値だけで自己判断するのは避けたほうが安全です。
確認先はメーカーではなく管理会社
注意していただきたいのは、耐荷重はメーカー側では判断できないという点です。
建物の構造に関する情報であるため、以下への確認が必要になります。
- 分譲マンション:管理組合、管理会社
- 賃貸物件:管理会社、不動産会社、オーナー
- 戸建て:施工した工務店、設計図書の確認
問い合わせの際は、製品の本体重量と設置面積を伝えると話が早く進みます。
賃貸の場合はもう一段の確認を
賃貸物件では、耐荷重に加えて次の点も確認しておく必要があります。
- 設置そのものの許可(大型什器の持ち込み可否)
- 床材の保護と原状回復の扱い
- 退去時の搬出方法
工事を伴わない設置であっても、大型の什器を長期間置くことについては事前に相談しておくほうが無難です。
なお、賃貸マンションへの設置事例が皆無というわけではありません。サイズを変更した仕様で設置したケースもあります。
ただしその場合も、事前の耐荷重確認は前提となります。
搬入経路と設置スペースの確認方法
耐荷重をクリアしても、搬入できなければ設置は実現しません。
ここで頓挫するケースは実際に起きています。
実際にあった搬入トラブル
ある現場では、エレベーターに部材が入らず搬入できませんでした。
最終的に、後日あらためて高所作業車を手配し、窓から搬入する対応となっています。
個室ブースは完成品を運び込むのではなく、部材を設置場所まで運んで現場で組み立てるのが一般的です。
そのため確認すべきは完成後の寸法ではなく、部材が通過する経路の寸法になります。
採寸しておきたい5つの箇所
導入を検討する段階で、次の箇所を測っておくとスムーズです。
- エレベーターの内寸と扉の開口幅:奥行き・幅・高さの3方向
- 廊下の幅と曲がり角:直角に曲がる箇所は、通過できる部材長が制限されます
- 玄関・室内扉の開口幅と高さ
- 設置場所の天井高:一般的な住宅の天井高は2,400mm程度が目安です
- 設置場所までの床の段差
エレベーターのサイズは物件ごとに異なります。同じマンションでも棟によって違う場合があるため、実測が確実です。
寸法が合わない場合の選択肢
搬入経路の制約で標準サイズが通らない場合でも、諦める前に確認したいのがサイズのカスタマイズ対応です。
メーカーによっては、高さや幅を変更した仕様に対応できる場合があります。
弊社でも実際に、天井高や搬入経路の都合で標準より小さいサイズに変更して設置した事例があります。
設置スペースは本体寸法だけでは足りない
見落とされやすいのが、本体寸法の周囲に必要な余白です。
- 扉の開閉方向と可動域:内開き・外開きで必要スペースが変わります
- 側面のコンセント分の余裕:側面に電源部がある構造の製品は、壁にぴったり付けての設置ができません
- 組立作業のスペース:現場での組立には、周囲に作業スペースが必要です
特に3つ目は当日になって判明しがちです。設置予定場所の家具配置は、事前に調整しておくとよいでしょう。
電源と工事の必要性
個室ブースというと電気工事が必要に思えますが、多くの製品は工事なしで使い始められます。
家庭用コンセントで使用できる
本格設置型の製品でも、家庭用の100Vコンセントで使用可能なものが一般的です。
延長コードからの給電にも対応しています。
内蔵されている設備は照明と換気ファンが中心で、消費電力はそれほど大きくありません。
専用回路の増設やブレーカーの容量変更を求められるケースは限定的です。
工事を伴わずに設置できる
床や壁への固定を伴わない製品であれば、内装工事も不要です。
部材を運び入れて組み立てるだけで設置が完了します。
これは賃貸物件での導入を検討する際に重要な点です。工事を伴わないため原状回復の負担が小さく、建物への加工も発生しません。ただし前述のとおり、耐荷重と設置許可の確認は別途必要です。

電源位置による設置制約
注意したいのが、電源部の位置です。
側面にコンセントを備えた構造の製品は、壁にぴったり付けて設置することができません。
コンセントの分だけ壁から離す必要があり、その余白を見込んだレイアウトが求められます。
メーカーによっては、オプションでコンセントの位置や扉の開き方向を変更できる場合があります。
設置場所のレイアウトに制約がある場合は、購入前に相談しておくと選択肢が広がります。
使い始めてから気づく「暑さ」の問題と対策
個室ブースについて、購入後に最も多く寄せられる相談が「ブース内が暑い」というものです。
設置前に把握しておきたいポイントを整理します。
なぜ暑くなるのか
個室ブースは密閉性が高いため、外気との熱のやり取りが限られます。加えて、人が入れば体温が、機器を使えば排熱がこもります。
重要なのは、ブース内の温度は設置場所の環境に大きく左右されるという点です。
天井に吸気・排気ファンを備えた製品の場合、設置場所の空気を取り込んで循環させる仕組みになっています。
つまり、部屋そのものが涼しければブース内もある程度快適に保てますが、部屋が暑ければブース内も暑くなります。
エアコンの効いていない部屋にブースを置いても、内部だけが涼しくなることはありません。
窓際の設置には注意が必要
現場で問題になりやすいのが、窓際への設置です。
背面がガラス仕様の製品では、太陽光が直接入り込みます。日中の日差しで室温が上がり、体感的にかなり暑くなります。
明るさを求めて窓際を選びたくなりますが、夏場の温度上昇まで考慮して判断したほうが無難です。
弊社には背面ガラスに目隠しシートを追加できる製品もあるため、レイアウト上どうしても窓際になる場合は確認してみてください。
現実的な対策
すでに設置している方に案内している対策は次のとおりです。
- ブース内に扇風機やサーキュレーターを置く:空気が循環し、体感温度が下がります。設置スペースを取らないクリップ式やデスク上に置けるサイズが扱いやすいでしょう
- 設置場所の空調を先に整える:ブース単体ではなく、部屋全体の温度管理で考える
- 使用していないときは扉を開けておく:空気のこもりを防げます
購入前に確認したいこと
暑さ対策の観点では、次の2点を確認しておくと判断しやすくなります。
- 換気方式(強制換気か自然換気か)
- 換気ファンの有無と、吸気・排気の両方に対応しているか
換気ファンがない製品では、短時間の利用に用途が限られる可能性があります。
遮音性能はどこまで期待できるか
個室ブースに期待する機能として、遮音性は上位に来るはずです。ただし、ここには認識のずれが生じやすい部分があります。
「防音」ではなく「遮音」
多くの個室ブースが備えているのは、音を完全に遮断する防音性能ではなく、音を小さくする遮音性能です。無音になるわけではありません。
実際の数値の目安
参考値として、あるワークブースの実測では約25dBの音量低下が確認されています(自社の簡易測定器による計測値のため、あくまで目安です)。
この数値がどの程度かというと、次のような体感になります。
- 通常の話し声:ブースの外にはほとんど聞こえません。オンライン会議の音声が家族に聞こえる心配は、実用上ほぼ解消されます
- 大音量の音楽:外に漏れます。楽器演奏や音楽鑑賞を目的とする場合、この性能では不十分です
楽器練習を主目的とするなら、専用の防音室を検討したほうが目的に合致します。
個室ブースの遮音性能は、あくまで会話や生活音を対象としたものと捉えてください。
遮音性能は構造で決まる
遮音性を左右するのは、素材の厚みだけではありません。隙間の処理が大きく影響します。
パネルとパネルの接合部、扉の縁、天井との取り合いなど、わずかな隙間があるとそこから音が抜けます。
逆に言えば、隙間を丁寧に処理した製品は、同じ素材でも高い遮音性を実現できます。
パーテーションで囲っただけの構造と、隙間を塞いだ構造では性能が明確に異なります。製品を比較する際は、この点に注目してみてください。

数値表記を見るときの注意点
カタログに遮音性能の数値が記載されている場合、あわせて測定条件を確認することをおすすめします。
測定機器、測定場所、音源の種類によって数値は変動します。音楽と話し声でも結果は変わりますし、部屋の反響の仕方によっても差が出ます。
同じ「◯dB低減」でも、測定条件が異なれば単純比較はできません。
設置場所は最初に決める:後から動かしにくい理由
個室ブースは、一度設置すると移動が想定されていません。設置場所は初回に決めきることが重要です。
キャスター付きでも移動は現実的でない
多くの製品にはキャスターが付いており、構造上は動かせます。大人数人がかりであれば移動そのものは可能です。
ただし、実務上は推奨されていません。理由は床材への影響です。
オフィスに多いOAフロア(配線を床下に収納する二重床)では、移動時にカーペットが捲れ上がってしまい、元に戻す作業が想像以上に大変になります。組立時にわずかに動かすだけでもこの問題は起きます。
自宅の場合も同様で、フローリングであれば傷、カーペットであれば捲れや跡が残る可能性があります。
消防への届出がある場合は再申請が必要
オフィスなどで設置にあたり消防署へ届出を行っている場合、移動すると再申請が必要になります。
設置場所を前提とした届出であるため、レイアウト変更のたびに手続きが発生します。
自宅設置では届出が不要なケースが大半ですが、この点も「気軽に動かせるものではない」という認識につながります。
設置場所を決めるときの判断材料
以上を踏まえ、初回に次の点を確認しておくことをおすすめします。
- 日当たり:窓際は夏場の温度上昇要因になります
- コンセントの位置:延長コードの取り回しと、側面電源の余白
- 扉の開閉方向:出入りのしやすさと、周囲の家具との干渉
- 生活動線:家族の移動を妨げない配置か
- 空調の効き:エアコンの風が届く範囲にあるか
特に空調と日当たりは、実際に使い始めてから不満が出やすい項目です。設置前に一日の日差しの入り方を確認しておくと確実です。
自宅設置が難しい場合の選択肢
耐荷重や搬入経路の条件を満たせない場合でも、選択肢は残っています。
簡易組立型に切り替える
重量が制約になっている場合、簡易組立型であれば設置できる可能性があります。
ただし遮音性能とのトレードオフになる点は理解しておく必要があります。「オンライン会議の声を漏らしたくない」という目的であれば期待に届かない可能性があり、「視界を遮って集中したい」「多少の生活音を和らげたい」という目的であれば十分機能します。
自分が本当に必要としているのは遮音なのか、それとも視覚的な区切りなのか。ここを整理すると判断しやすくなります。
個室ブースのある施設で試してみる
購入前に実際の使用感を確かめる方法として、個室ブースを設置しているコワーキングスペースの利用があります。
カタログの数値だけでは、遮音性能も広さも実感がつかめません。実際に1時間ほど作業してみると、次のような点が具体的に分かります。
- どの程度の音が聞こえるのか
- 圧迫感はあるか
- 長時間座っていて空気は問題ないか
- 自分の作業スタイルに合うサイズか
導入を判断する材料としては、スペック表よりも確実です。
弊社も東京神保町駅近くでコアワーキングスペースを運営しています
お近くの方は是非ご利用ください

タイミングを改めて検討する
事業の拡大やオフィスの移転、転居のタイミングであれば、耐荷重の条件を満たす環境を選べます。
「今は設置できない」は「今後も設置できない」を意味しません。条件を把握しておけば、環境が変わったときにすぐ判断できます。
設置前チェックリスト
最後に、確認事項をまとめます。製品の比較検討に入る前に、ひととおり確認しておくことをおすすめします。
①耐荷重
- 検討している製品の本体重量を把握している
- 管理会社・不動産会社に耐荷重を確認した
- 賃貸の場合、設置の許可と原状回復の扱いを確認した
②搬入経路
- エレベーターの内寸(幅・奥行き・高さ)と扉の開口幅を測った
- 廊下の幅と曲がり角を確認した
- 玄関・室内扉の開口部を測った
- 設置場所の天井高を測った
➂設置場所
- 日当たり(特に夏場の日差し)を確認した
- コンセントの位置と、側面電源分の余白を確保した
- 扉の開閉方向と可動域を確認した
- 生活動線を妨げない配置になっている
④空調
- 換気方式(強制換気/自然換気)を確認した
- エアコンの効く範囲に設置場所がある
- サーキュレーターを置く余地がある
⑤遮音
- 必要な静けさの水準を整理した(会話レベルか、楽器レベルか)
- 製品の遮音性能と、その測定条件を確認した
このうち耐荷重と搬入経路は、確認に時間がかかる場合があります。検討を始めた段階で先に着手しておくと、その後の製品選びがスムーズに進みます。
サイズや設置条件でお困りの場合は、ご相談ください
搬入経路に合わせたサイズ変更に対応できる場合もあり、条件が合わないと諦める前に確認する価値があります。

まず実物を確認したい方へ
見学会では、実際のワークブースをご覧いただけます。個室ブースを設置しているコワーキングスペース「いいオフィス神保町 by I・SPACE」でも、使用感を体験いただけます。

